お寺での成約に学ぶ!営業で大切なのは信頼される努力│続き

前回(アプローチ編)の続きです。

前回は相手と関係性を築けないままプレゼンに突入してしまいました。

心のつながりを築かずに提案して「売られたくない」スイッチを押したら契約には至りません。

さて、プレゼン中にどうやって関係性を築こうか…

ただ、ここで大切なことは方法論よりも「信頼されようとする努力」だったりします。

今回のケースでは主権者だけでなく「関係者全員と関係を築く努力をした」ことで相手の心の扉を開くことができました。

プレゼンは説得ではなく、納得の積み重ねです。

というわけで続きをどうぞ。

背景:アップセルとは

エピソードを振り返る前に、僕の仕事について簡単に説明しておきます。

このときの僕の仕事は、NET以外を使っている加入者様に、NETも契約していただくこと(アップセル)です。

今回の訪問先は「お寺」でした。ちなみに飛び込み営業も執筆時点で3年やってます。

そしてNET獲得のために考え出した戦略が「プラン変更は快適なネット環境が前提」です。

旧プランと比べてサービス内容や料金がどう変わるかを説明して、そのうえでネット環境を確認させてもらう…毎回この流れを作っています。

プレゼン編│お寺でのエピソード

プランを変更いただくと、なんとこちらの動画配信サービスが無料でお楽しみいただけるようになります

いつもの案内をしていると、ご主人の隣で絵を描いていた小学生くらいの女の子が急に反応しました。

女の子「え!じゃあディズニー見れるの?!」

ディズニープラスじゃないけど…

と思いつつも、僕は女の子のテンションに呼応するように答えました。

ええ、見れますよ!(有料だけど)

僕「無料期間中にやめていただければお金かかりませんし、他にもいくつか(動画配信サービス)使えますから、ほとんどのアニメが見放題ですよ。きっと喜んでいただけると思います」

女の子「よっしゃー!鬼滅の刃見れるー!」

女の子は体を弾ませるようにご主人に体を向けて言いました。

うれしさいっぱいの娘の姿に、ご主人も父親としてうれしかったのでしょう。その場の全員が笑顔になりました。

よーし、良い流れだ!

ルータを見せてください

ひとまず案内を終えて、プラン変更するか確認を取りました。

それじゃあ、お願いします

かしこまりました。それでは最後に確認事項がありまして…

僕「Wi-Fiの品質をチェックさせていただきたいんですね。動画配信サービスはインターネット経由でお使いいただくことになるので、こちらが保証する水準に届いているか確認する必要があるんです。

後で『見れないじゃないか!』ってなったらお子さんもガッカリされると思うので、ぜひご協力をお願いします。ルータを直接見せていただくか、難しければ写真を撮ってきていただきたいのですが…」

じゃあ、見ます?

ご主人が案内してくれたのは長い廊下の先、1番奥の部屋でした。

扉を開けてもらうと、自社サービスの契約者であるおじいさんが、白いタンクトップ型の下着姿でデスクトップPCに向かっていました。

あっお邪魔してます、私○○社の三田と申しまして、今日はプラン変更のお手伝いで伺いました

ああそう、どうも

ちょっといい?ルータ見たいから場所空けてくれる?

おじいさんは立ち上がらず、キャスター椅子に座ったまま後ろに移動しました。

ありがとうございます。それじゃあ見させていただきますね

はいどうぞ。パソコンずらしましょうか?

あ、引っ張れば見えそうです。ありがとうございます

古いルータあるあるの「問題」とは?

…あー、やっぱりですか。見るからに古いルータですからね

僕「ちょっとこちら見ていただいてもよろしいでしょうか?

ここに2012年製ってある通り、このルータは非常に古くなってまして、これだと少なくとも2つ問題というか、損されている可能性があるんですね?」

ここで一度言葉を区切り、ルータを元の位置に戻してからご主人に向き直って身振り手振りを交えながら説明を続けました。

僕「まず1つ目が、このルータだとセキュリティが古くて危ないかもしれません。

Wi-Fi飛んでると思うんですけど、ちょっと知識ある人だったら普段の通信状況とか見れちゃいますよ。」

お寺なので来客される方多いと思うんですけど、そこがちょっと心配ですね

確かに…

ご主人の真剣な表情を確認してから、2つ目について触れました。

2つ目は、単純に損されている可能性がありますね

僕「インターネットって相場でだいたい6000円前後なんですけど、これだけ古いとおそらく速度が出てないと思うんですよ。

そしたら速度出てないのにお金だけはしっかり払っているってことになるんですけど、もしそうだとしたらどう思われますか?」

あー、確かに!

ご主人は「確かに、確かに」と繰り返しうなずきました。

1つ目はともかく、2つ目の速度についてはお調べできますよ

会話のテンポも心の波長も完全にリンクしていました。なので遠慮なく、さらに踏み込みます。

蚊帳の外にいたご契約者さまに声かけ

「速度測定」で検索するとWi-Fiの速度がわかるのでケータイをお出ししただけますか?

ああはい…あれ? ケータイない。さっきの部屋かも

あ、じゃあここでお待ちしてますね

ご主人が携帯を取りに戻るまでの間、契約者本人であるおじいさんと2人きりになりました。

結局この人がNOだと契約にならないんだよな~

そう思い、ずっと口をきいていないおじいさんに声をかけました。

いつも弊社サービスを使っていただいてありがとうございます

僕「何かお困りごととかないですか?」

いや、特に問題ないですね

そうでしたか!それはよかったです!

僕「ちなみに普段からパソコンをお使いなんですか?」

ええはい、仕事で書類作ったり印字したりするのに使ってますね

そうでしたか。先ほどご子息様にお伝えした通りですが…

僕「ルータがだいぶ古くなってますので、ルータを変えたらかなり速くなるかもしれません。

貴重なお時間を割いていただいてますので、せっかくなのでちょっと見ますよ」

文字にすると恩着せがましいですね。でも実際はおじいさんうれしそうでした。

ケータイありました!

ちょうど良いタイミングでご主人が戻ってきたため、おじいさんとの雑談はここまで。

でも僕の人となりを知っていただくのに十分な会話ができたのでOKです。

昔はご家族の同意が得られなくてよく失注しました。でも今はこういう些細な配慮で9割成約するようになりました。

驚愕トークで深刻さを伝える

僕「ありがとうございます。そしたら、今ってWi-Fiに繋げてますよね? その状態で『速度測定』と検索していただけますか?」

はい、これですか?

はい、それですね。じゃあ計測してみましょうか

計測結果
  • Download 19Mbps
  • Upload 1Mbps

ジュウキュウ!!おっそ!!笑

わざと驚きを口に出して、深刻さを実感してもらいました。

非常に効果的な手法です。でも関係性を築いてないと、ただ失礼なだけで逆効果に。

ルータが目の前にあるのに19Mbpsしか出てないので、これは正直ヤバいですね。

僕「ちなみにですが、もし1Gの契約をされてるとしたら、みなさんだいたい300~400は出てますので、10分の1すら届いていないことになりますね。

これだと先ほどのお部屋まで届いてても、使いものにならないんじゃないですかね?」

そうなんですよ~! むしろ届いてないことのほうが多いです!

関係性はすでに築けてますので、このリアクションを引き出せた時点で成約は決まったも同然でした。

やっぱりですか。一応向こうのお部屋でも調べてみましょうか

僕「そしたらここでお調べすることは済んだので、あちらでお話ししましょう。Uさん(おじいさん)、ありがとうございました」

料金も現状確認させていただく

最初に案内いただいた部屋に戻ってきました。

それじゃあもう一度計測してみてください…ってこれ、すでにWi-Fi切れちゃってますね

ご主人の携帯画面を覗くと、扇マークから4Gに切り替わっていました。

僕「この部屋はWi-Fi届いてないみたいですね。だとしたら、もしかするとケータイ代も上がってしまっているかもしれませんね。

My docomoというアプリは入ってますか? もしよろしければ毎月どれくらいWi-Fiから外れてしまっているか見ますよ」

ありがとうございます。ん~、どこだ~?

真剣な表情でアプリを探すご主人。いい感じです。

昔の僕は「ケータイ変える気ない」で終わって、現状確認に進めなかったな

今は飛び込み営業でもMy○○を見せてもらえます。心の壁を越えるコツは別記事で紹介したいです。

あ、ありました。これですよね?

これです。それじゃあ開いてみてください。パスワードってわかります?

たぶんわかると思います…よし、入れました

OKです。…あれ? 思ったほど使ってないですね

僕「過去6か月間のデータが見れるんですけど、見てください。平均で14GBしか使ってないみたいです。」

そもそもケータイほとんど使わないですからね

そうなんですね。でもだとすると…

僕「今Uさんは無制限で1台につき5000円くらいかかってるんですけど、もし仮にWi-Fiに接続していたら、もしかしたら5~10GBとか、なんなら毎月3GBで済んだかもしれません。

そしたら、もし仮にうちのケータイだったらなんですけど、5GBのプランが1000円ですから、差額4000円は浮きますよ。

Uさん、Wi-Fiに接続できてなかったがために1人4000円も余分に払ってたと思ったら気分はいかがですか?

それはもったいなかったですね~

そうかもしれませんね。ちなみにご家族合わせて(ケータイは)何台ですか?

父とは支払いを分けてまして、全部で4台です

4台ですか~。ということは、差額は1万6000円ですね~

僕「まあざっくりと月に1万5000円だとしましょう。年にすると…(計算アプリを)見てください。18万円も浮きますよ!

考えてもみてください! Wi-Fiが繋がるようにするだけで毎年18万円も節約できるとなったらご気分いかがですか?!

はぁ~、結構大きいですね~

ですね~。とはいえdocomo使って長いですよね?

僕「ルータが10年以上前でしたし、その頃からお使いいただいていると思うんですけど、ちなみにdocomoにこだわりとかってありますか?

いえ、父がdocomo選んだだけで、こだわりとかは特にないですね

そうでしたか! ちなみにさっきのルータの件なんですけど…

僕「そっちももし仮にうちにまとめていただくと、おそらく速度が700~800は出ると思いますし、何よりこのお部屋までWi-Fiが届くと思います。

オプションの中継器も必要ですが、細かく説明はせず、背中を押すことに集中しました。

一旦話をまとめますね。

まず、今回プラン変更するためにはルータの交換が必須です。Wi-Fiが届かないと動画配信サービスも使えないので、このままだとお子さんもガッカリすると思います。

次に、もし仮にうちでまとめた場合ですが、現状19Mbpsが少なくとも600は出るはずですから、約30倍速くなって、しかもこの部屋までWi-Fiが届くと思います笑

さらに毎月のご負担が1万5000円下がることになるんですけど、もしそうなったら『まとめてもいいな~』って思われます?」

いや、むしろまとめたいんですけど笑

わかりました!じゃあこのまま私がサポートさせていただきますね

僕「ただ1つお願いがありまして、ご契約者様がお父様でいらっしゃいますので、うちにまとめるご許可をいただく必要があるのですが…そこは大丈夫そうですか?」

ちょっと待っててください。説得してきます

手のひらを僕に向けて立ち上がり、急いで部屋から出ていきました。

2人のお子さんは相変わらず部屋の中で遊んでいましたが、特に声をかけることもなく、そそくさと申し込みの準備に入りました。

お待たせしました。大丈夫です

ありがとうございます。そういえば奥様はいらっしゃいますか?

僕「こちらにお電話した際に女性の方からここの場所を伺ったのですが、奥様にも一応確認していただいたほうが良いと思うのですが…」

それもそうですね! 2階で仕事中ですので、一応声かけておきます

そう言って再び部屋から出ていきましたが「問題ない」とのことで無事お申し込みをお預かりするに至りました。

まとめ

今回のポイントは以下の3つです。

  • 家族全員と話して「味方」と感じてもらう
  • 1人ひとりのメリットを意識して伝える
  • 売り込みはしない。問題解決に徹する

「お寺」という特殊な現場でしたが、実際には「家が広すぎてWi-Fiが届かない」という問題を抱えていました。さらにご家族は若い世代ながら通信リテラシーが低く、ネット環境については完全にあきらめていました。

営業側から見れば大チャンスですが、相手は「無知に付け込まれるのでは」と警戒するものです。

だからこそ礼儀を尽くし、関係者全員から信頼を得ることが何より大切です。

今回はその点がきちんとできたので自然と成約につながりました。

営業は簡単ではありませんが、決して難しいものでもありません。

このブログを通じて、その実感を少しでも持っていただけたならうれしいです。

今回は以上です。

…もしよかったら今回のエピソードに関わるこちらもどうぞ!

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